佳き日に



流れるような動作で閏は電話にでる。

「お久しぶりです、雪先輩。」

「あぁ、久しぶりだな。」

懐かしいその声に閏は顔をほころばせる。

「で、どんな要件でかけてきたのですか?新たにメモリーズが見つかったんですか?」

閏は、雪と同じ立場に身を置いている。
警察と手を組んでいる、数少ないメモリーズのうちの一人だ。

閏と雪の生活は、同類メモリーズを殺していることで成り立っている。

「いや、それはまだだ。」

「じゃあ、情報関係ですか?」

「あぁ。少し流してもらいたい情報がある。」

携帯越しに雪の声を聞きながら、雪先輩は今度は何をするつもりだろう、と閏は考える。
あまり多くをしゃべらないから、何を考えているのか分からないのが雪先輩だ。
でも、つき合いにくいというような人ではないから不思議だ。

「赤い女が福島県にまだいる。」

「それだけですか?」

「あぁ。警察にはバレないように、メモリーズだけに。できるか?」

「いいですよ。」

じゃあ料金は後で請求します、と言おうとしたら雪に遮られた。

「あと、閏。もう一ついいか?聞きたいことがあるんだ。」

「何ですか?」

「福島県の高校の制服って分かるか?」

・・・・制服?

雪の言葉に、閏の思考回路が一瞬止まった。


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