佳き日に




「とぼけても無駄だよ。君の家のカレンダーに貼ってあったあの雨のメモが何よりの証拠だ。」

男の言葉に茜はあぁ、とメモの存在を思い出す。

「あのメモ、もう一回見せてもらえませんか?」

「……はぁ?」

男は思わずといったふうにこちらを振り向く。
依然として突きつけられている銃は怖かったが、何より茜はあのメモが気になっていた。

「なんか、あのメモ見れば分かる気がするんです。」

「……何がだい?」

「何か、大切なこと。」

茜の言葉に男はなんとも言えないような顔をした。

「私、家族が死んでからずっと違和感があったんですよ。何か足りないような。店に置いてある椅子を見れば誰かがいた気がしてしょうがないし。」

茜は男のサングラスの奥の目を見つめようとした。
だが、やはり目は見えず、男がどう思っているかなど分からない。



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