佳き日に
『あ、もしもし雪?まずいことになったし。』
「……何があった?」
『御学高校行ったらなんかすごい騒ぎで。近くにいた奴の話聞いたら、五歳くらいの女の子が窓ガラス割って突っ込んできて、女子生徒の手掴んで走って出て行ったって。』
「……その女子生徒ってのは、」
『多分、琥珀。』
雪と閏は顔を見合わせる。
「琴、お前はそこで待機しててくれ。閏が行くまで動くな。」
雪はそう言って電話を切った。
突然の話に閏はえ、と固まる。
「僕が御学高校に行って琴と合流するんですか?」
「あぁ。お前と琴は灰神楽を。場所特定出来るか?」
「出来ますけど……」
閏はスペアで持っている携帯電話を取り出す。
「雪先輩は萩、ですか?」
「あぁ。その前に、あの女に連絡をとるけどな。」
「琥珀さんに?彼女、今きっと萩と一緒にいるはずなんですから連絡とったら危なくないですか?」
閏の問いに答えながら雪は銃に弾を詰めていく。
「大丈夫だ。あいつには危険時の暗号を教えてある。」
「暗号?」
なんですか、それ、と閏が不思議そうな顔をしても雪は微かに笑うだけだった。
「じゃ、行くか。」
なんだか納得いかない思いを抱えながらも、閏は雪の後を追い家を出た。