佳き日に
[1]
ガシャン、バリィンッ、と耳障りな音をたててガラスが割れていく。
琥珀は荒い呼吸に胸を苦しめながら、ただただ走っていた。
五歳ほどの少女に手を引かれ狭い道を全力疾走。
先程から降り注ぐように撃たれる弾は、琥珀のすぐ後ろスレスレを通っていくものだから、足を緩めることも出来ない。
いつくもの角を曲がったはずなのに、琥珀を狙う弾は休む間もなく迫ってくる。
パァンッと音がしたかと思うと琥珀の30cmも間もない位置に置かれた植木鉢が粉々になった。
「ぎゃぁぁ‼」
驚きに声をあげると琥珀の手を握る少女の手の力が強まった。
彼女は琥珀を引っ張りながら走っているはずなのに息一つ乱れていない。