佳き日に
「なに今のかっこいい‼」
興奮冷めやらぬまま琥珀が顔を上げれば、体に刺さったガラスを抜いている少女と目が合った。
琥珀も自分の体を見てみれば傷だらけだ。
ガラスで切ったのだろう。
「大丈夫?」
琥珀がそう聞けば少女はコクリと頷いた。
あちこち切れてしまった白いワンピースに血が滲んでいる。
とても痛そうなのに少女は無表情に淡々とガラスを抜いている。
なんとなく雪に似ているな、と琥珀は思った。
そしてもう一つ、驚いたことに少女はマスクをしていた。
ここ最近のトレーニングで体力に自信をつけた琥珀でもついていくのが精一杯のスピードを、この少女はマスクをつけたまま走っていたのだ。
こんな小さな子についていくのが精一杯だなんて、少し落ち込む。