佳き日に
「・・・っひ!」
銃だ。
本物の、人を殺す道具だ。
心臓が一気に冷やされた気がした。
今時、日本で銃なんて持ってる人いたんだ。
というか、何で私道に迷っただけなのにこんなに危険な目に会っているんだろう。
銃口を突きつけられた男がわなわなと震える。
おい、逃げなきゃ、私。
そう呼びかけても、足が一向に動かない。
「こ、殺さないでくれっ!」
男が頭を地面に付けてそう叫ぶ。
銃を持っている男はただじっとその様子を見つめている。
「残念だが、それは無理だ。」
「なんでっ、なんでだよぉっ!俺は何もしてないぞっ!」
「いや、した。」
激しく叫ぶ男は泣きながら困惑している。
自分が何をしたというのか、俺は何もしてないぞ、とその目が訴えている。
「お前は、したんだよ。」
再度、黒い男はそう確認するように言った。
銃も持った右手にグッと力が入ったように見えた。
琥珀は息を飲む。
「だって、お前は、メモリーズだろう?」
どこか諦めたかのような黒い男のその言葉に、血まみれの男は目を見開く。
なぜ、と震える唇から言葉が漏れる。
黒い男はその質問には答えなかった。
ドォンッ、と渇いた音が、響いた。