佳き日に





「始めに言っておくが、秘密警察に入った奴らの中で実際にメモリーズを殺せる者なんて本当に一握りだ。大抵は、奴らに殺される。」

「……はい。」

「こちらはメモリーズだと分かれば人ごみでも遊園地でも撃ち殺していいが、相手もそれでみすみす殺されるほど馬鹿じゃない。生まれたときから人殺しで生きている奴が殆どだ。命の駆け引きに関しては、奴らが数段上だ。」

ピンと張り詰める空気。

暗く、何も見えないと分かっていても、茜は前を見つめ続けた。

「そして、これも脅しのつもりで言うが、期限はあと二十五年だ。」

「何の期限ですか?」

「政府がメモリーズ征伐の指揮権を全面的に、こちらの秘密警察に与えてくれる期間だ。」

フーッと、見えない相手のため息が聞こえた気がした。

「元々五年前に、そういう盟約が結ばれたんだ。以後三十年間でメモリーズを殲滅させる、というな。」

「……三十年間で、全国に二百人以上いるメモリーズを全て殺せると思ったのですか?」

「一応秘密警察は五百人いることになってるからな。警察の中でも戦闘に優れた一握りの奴らを選んで五百人。だが、その五割以上が初陣で死ぬ。不足する度に補っているから五百人体制は保たれているが、半年生きられる者など五十人に一人だ。」

つまり、力の差は圧倒的なのだろう。
人間と、メモリーズの。


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