佳き日に
[1]
まるで振り子のように、足が大きく振り上げられる。
霞む視界が大きく揺れたと思ったら、謎の浮遊感。
え、と思ったときにはもうすでに蹴り飛ばされた後だった。
ガガガッと固い地面に投げ出される。
「かっ……はっ……」
首の圧迫が解け、琥珀は咳き込みながら吸って吐いてを繰り返す。
雪が、萩を蹴り飛ばしたのだ。
それで萩に首を締められていた琥珀も巻き込まれる形となった。
上下感覚を取り戻せず、琥珀は目の前の壁にある汚れに意識を集中させる。
それでもまだ頭はぐわんと揺れているようだ。
「いい場所だな。」
後方で呟かれた雪の言葉を揺れる思考で琥珀はなんとか捉える。
いい場所って、こんな空きビル空き家だらけの場所が?
手をざらざらした地面につき、なんとか体の向きを変える。