佳き日に
雪は萩の様子など気にもとめず、目の前のビルを見上げた。
すっ、と腕を上げ、ビルの上の階の方を指差す。
「このビルのあのあたりの階に、閏と琴がいるんだ。」
詩を朗読するかのように言った雪。
それにつられて、琥珀と萩もビルの上の階を見る。
キラッと何か光った気がした。
「あ。」
何かが、琥珀が見ていたビルの上の方の階から落ちてきていた。
けっこう大きい。
人だ、と琥珀は思った。
でも、閏でも琴でもない。
黒髪の、ぐったりした女の人。
自殺?と琥珀は顎を上げたまま考えた。