佳き日に
「死んだって、なんで。」
『赤い女に殺された。いや、正確には椿が赤い女を殺そうとして失敗した。』
菘は眉を顰める。
「椿が赤い女を?」
椿は戦闘はあまり得意ではなかったはずだ。
赤い女の情報を菘のために集めてはくれたが、椿が赤い女を殺すつもりだったなんて話は聞かなかった。
そもそも、赤い女は菘のターゲットだと知っていたはずだ。
『まぁ、敵討ちってとこじゃないのか?』
「敵って、誰の?」
『椿の両親だよ。』
その言葉で、何かが崩れていくような気がした。
椿から赤い女に親を殺されたメモリーズの話は聞いた。
雪や梔子のこと。
だが、椿もそうだったなんて。
長い間一緒にいて、一番近くにいて、椿のことは何でも知った気になっていた。
本当は、何も知らなかったのに。