佳き日に
『……あんた、何も知らないんだな。』
内心をズバリ言い当てられて菘はカッとなる。
「あんたの話が全部嘘ってこともあるよね。」
『こんな趣味の悪い嘘つく奴がどこにいるんだよ。』
「そもそもあんた誰よ。」
『あぁ、まだ言ってなかったか。俺は情報屋だよ。椿に頼まれて赤い女の情報を集めてた。』
菘は椿が頼っていた情報屋を何人か思い出す。
「もしかして、あんた人間?」
『あぁ、人間だよ。』
「あんたが赤い女に椿の居場所を教えたの?」
『まさか。大事な情報交換相手を売るわけないだろ。』
「じゃあ誰が椿の居場所を赤い女に教えたのか分かる!?」
菘の口調は強くなっていた。
それに気後れしたのか、情報屋は少し口ごもる。
『いや、誰が教えたとかじゃなく、赤い女は始めから椿の居場所は知っていたと思う。』
「……は?」
『椿が拠点にしていたあのビルは、二十年以上も前に椿の両親が殺された場所だ。』
思わず菘は口をポカンと開けていた。
両親が殺された場所にそのまま住むなんて、そんな危険なこと。
椿は何を考えていたんだ、馬鹿じゃないのか、という思いが巡る。