佳き日に
『赤い女が自分を殺しに来るのを待っていたんだろうな。』
「……。」
『返り討ちするつもりだったんだろ。』
布団に潜っているはずなのに、菘は悪寒がした。
『あぁそうだ。で、肝心の伝言だが。椿が拠点にしていたビルから南の方向に墓地があるのは知ってるか?』
「……知ってる。」
『その墓地の北東の端の方に、苔が生えまくってどこの家のだかも分からないくらいに古い墓がある。それをお前にやるってさ。』
「……は?」
『だから墓をお前にあげるって。椿が。』
「要らない。」
冷たくそう言い放つと、菘は予告もなしに電話を切った。