佳き日に
わけが分からなくて、裏切られた気がして、悲しかった。
椿は菘が赤い女の情報を欲しがっていたのを見て、内心では馬鹿にしていたのだろうか。
自分は赤い女を殺そうと待ち伏せて。
しかも、菘に墓をやるなんて、なんの嫌がらせだろうか。
墓ほどメモリーズにとって必要ないものはない。
死んだってゴミになるだけのメモリーズに、墓なんて要らない。
捨てられたまま、見向きもされないのに。
遺骨を壺に入れて涙ぐむ人間を見る度に、自分たちの惨めさを思い知ってきた。
メモリーズは、世界に何一つ残せないのだ、と。
ふつふつと、胸に怒りが湧いてきた。
やってやろう、と菘は思った。
椿が出来なかったことをやってやる。
赤い女を殺して、自分が椿より上だ、ということを証明してやろう。
菘はそう強く決心した。