佳き日に



「ねぇ、琴もさ、殺し屋以外に生きる道はなかったの?」

責める様子も、咎める様子もなく、本当にただ疑問に思ったように琥珀は聞いてきた。

「つか、生まれたときからそーゆー奴らしか周りにいなかったから、自分も殺し屋になるしかないと思ってたし。それ以外の選択肢の存在も知らなかったし。」

答えながらも、琴は頭の中では別のことを考えていた。

人を殺して生きている自分たちのことを琥珀はどう考えているのだろう。
軽蔑されただろうか。
消そうと思っていた感情がまた湧き上がってくる。

人生の途中でたまたま関わりをもった、それだけの、赤の他人だったはずなのに。
いつの間にか、琥珀はその範疇を超えていた。

「萩って子とそのお母さんが死んでからさ、色々考えてみたんだ。」

ぽつりと琥珀がそう言い出した。

「殺人は悪いことだとか、生きるためにはやらなくちゃいけないこともあるとか、たくさん考えてたらわけわかんなくなっちゃった。」

「……琥珀って馬鹿だし。」

呆れたように琴が溜息をつけば、琥珀が慌てて喋り出す。



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