佳き日に



[4:25years ago]



サングラスをかけ、煎餅をボリボリと食べ続ける目の前の男を茜は見つめた。

「お前、ふざけてんのか。」

上司のくせに仕事中に煎餅食べてるあんたの方がふざけてるよ。
茜はそう思っても口にも顔にも出さず平静を保っていた。

「ふざけてません。」

「じゃあなんだよその格好は。」

指を差され茜はぐっと言葉につまる。
この男の言うことは正論なのだ。
おかしいのは、フリルがたくさんついた真っ赤なドレスを着た茜の方だ。

「敵をおびき寄せるための餌です。」

「その格好じゃメモリーズどころか人間も寄り付かねぇだろ。」

冷静に反論してくる上司にあぁもう!と茜は痺れを切らした。

「与えられた仕事はちゃんとやりますから!それで問題ないでしょう!?」

茜が荒々しくそう主張しても、上司は表情を変えず黙ったままだった。


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