佳き日に




[4:25years ago]





とても強い力で壁に手を押さえつけられる。

持っていた銃は奪われ、なす術なく茜は目の前の新たに出てきた男を見つめる。
蘭々と輝く茶色い目。
メモリーズだ。


「あんたがさっき殺した男の名前、分かる?」

「知るか。」

顔を近づけてきた男の酒臭い息に茜は顔を顰める。
男の顔には大きな引っ掻き傷のようなものが頬に走っていた。


「あんたがさっき殺した男の名前は、海だ。俺の仕事の尻拭いをよくやってくれたんだ。」

海。
まさかここで茜が好きな海という名前のメモリーズを殺したとは。

目の前の酒臭い男の目には憎悪が滲んでいた。


「海、いい名前だね。」

「死ね。」

自分から話振っといてその終わらせ方はないでしょ。
茜がその不満を口にする前に首を掴まれ別の部屋に押し込まれた。

暗く、狭い。
さっきまでこの男はこの部屋に隠れていたのだろうか。



< 358 / 627 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop