佳き日に
「まず、助けを呼べないように喉を潰す。」
暗闇で何も見えなかったが、男がニィッと笑ったのが分かった。
そして片手にカチャッと何か持った音も。
喉を潰すと言ったのでトンカチでも持っているのか。
ところで、ここで男が片手を離したことにより茜の片手も自由になっていた。
両手で茜の両手を押さえていたので当たり前と言えば当たり前なのだが。
男の腕は太く大きいので片手で茜の両手を押さえることも出来るだろうに。
この男は馬鹿なのか、と茜は訝った。
「どうした?怖くて声も出ないのか?」
違う、この男は馬鹿というわけではない。
逆だ。
茜を、馬鹿にして舐めきっているのだ。
まぁ茜は女だし銃も奪われフリフリのドレスを着ているので舐める気持ちも分かる。
客観的に見て銃もない茜がこのガタイのいい男に対抗出来るとは思わないだろう。