佳き日に




[5]




まるで捨てられた犬のように。
いや、琥珀さんはどちらかと言えば猫ですね、などと閏は考えた。

意識を食事に集中していたので彼女が言ったことを処理するのに時間がかかった。
三人はどうするの、と言われた。
三人とは、雪、閏、琴のことだろう。


「どうするっていうのは……?」

閏が曖昧にそう言えば琥珀の黒い瞳がしっかり捉えてくる。


「だから、政府は五年後にはメモリーズすべてを殺す予定って話。今、閏たちは秘密警察とかいうのに所属してるから大丈夫なんだろうけど、四年後あたりで絶対裏切られるって。」

あぁ、なんだそのことか、と閏も琴も力を抜いた。


「裏切られたら裏切られたでその時は逃げるし。」

「どこに!?」

「まぁ妥当な案でいけば国外ですかね。」

「俺世界一周旅行っていうやつやってみたいし。」

雪も閏も琴も今まで馬鹿高い報酬で依頼をこなしてきたが、そのほとんどは使っていない。
琴の言う世界一周旅行も三回ほど出来てしまうくらいには貯金に余裕はある。



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