佳き日に
『一月二日。
今日も雪が降った。
外に出たくないから最近の依頼は断っている。』
『一月三日。
今日は雪は降らなかった。
書くことがないのでとりあえず自己紹介でも書いておこう。
名前は雨、十九歳男。
趣味は映画鑑賞。
最近はあまり映画は見てないが。』
雨。
そう書かれた紺色の文字をなぞる。
雨、雨、どこかで聞いた気がするが、琥珀はどこで聞いたのか思い出せない。
琥珀が日記の紺色の文字を見つめながら考えていると、キィィッと後ろで扉が開く音がした。
「あれ、お前何やってんだし。」
入ってきたのは琴だった。
琥珀が振り返ると琴は琥珀の手元を見て目を丸くした。
「何読んでんだし!」
「は?」
バッと勢いよく手元から本を奪われた。
突然の琴の言動に琥珀はただただ呆然とする。
琴も琴で怒っているというよりは自分で自分の行動に驚いているようだ。
「えっと……ごめん、読んじゃまずかった?」
「いや、そーゆーわけじゃないっつうか。ゆ、雪の本だし、これは。だから雪に許可もらってから読むべきだし。」
あぁやっぱり雪のだったんだ、と琥珀は思い頷く。