佳き日に
「あぁ。雨の日記も隠してあったぞ。」
「えっ。」
さらっと言った雪に琥珀は顔を引きつらせる。
それは雨が少しかわいそうだろう。
「墓にあった。」
「墓ですか?」
今まで黙って餃子の皮を誰よりも速く包んでいた閏も気になったのか話に混ざってきた。
「墓は大事な物を隠すにはうってつけだ。遺骨なんて金にならないもの盗んでいく奴はいないし、石は重いから雨風嵐にも中身を守る。」
雪の説明に琥珀たち三人はへぇ、と感心した声を出した。
墓石を動かせばそこに遺骨がおいてあるはずだ。
そこに隠すのか。
あるほど、と琥珀は頷いた。
確かに墓石は大事なものを隠すにはピッタリかもしれないと思う。
「それに雨は日記を燃やしはせずに隠した。見られる恥ずかしさもあっただろうが、どこかで誰かが見つけてくれることも期待していたと思うぞ。」
付け足すように言った雪の言葉に琥珀は軽く笑った。
それは雪の都合の良いように解釈しすぎだ、という意味で笑ったのだが、あながちそれが間違いでもなかったことに後日気づくことになる。