佳き日に






[2]



部屋の中の空気が重い。

朝起きて鉛丹が真っ先に思ったのはそのことだった。
秋はカラッとした気候のはずなのになんでこんなに空気がどんよりしているのだろう。

気持ちまで滅入ってきそうなので鉛丹は窓を開ける。

同時に、カァカァとうるさくカラスが鳴いた。
しかも、一斉に五羽くらい、鉛丹が開けた窓のすぐ近くで。


「うっせぇ!」

あまりのうるささに鉛丹は叫ぶ。

それでもまだカラスはカァカァ、ギャアギャアと鳴いている。


「兄さん、近所迷惑です。あと動物のやることに腹を立てないでください。」

後ろで桔梗がそう言ってむくりと起き上がった。


「あと今日は琥珀さんと勉強会なので早く出かける準備をしてください。」

寝起きの桔梗の機嫌が悪いのはいつものことだ。



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