佳き日に




ケラケラと笑う琥珀。
もしも桔梗の考えが正しくて、琥珀はただの一般人だとしたら、雪と琥珀は何故一緒にいるのだろう。

そう考え始めると、桔梗の頭には理科の問題など全く入ってこなかった。


「桔梗。飲み物ないんだったら一緒に買いにいかない?」

琥珀にそう話しかけられたが、反応するのに一瞬間があいた。


「そうですね。」

琥珀がこんなふうに人と一緒に買い物に行くことは今まであっただろうか。
珍しい。

何か企んでいるのかと桔梗は少し危惧したが、それは無用のようだった。

レジへ向かう途中の琥珀は確かににやけていて何か隠しているようだったが、そこに悪意はないように思われた。
どちらかというと子どものイタズラや、サプライズのような。


「はいこれ、桔梗にあげる。」

「………はい?」

考え事をしていた桔梗の前に琥珀が何か差し出してきた。
青い包装に包まれた小さなもの。
リボンのシールが貼られている。


「今日誕生日なんでしょ?おめでとう。」

「……あ、ありがとうございます。」

一体これは何の冗談なのだろう、と桔梗は思った。
敵対する立場にいる相手からプレゼントを貰うとは。



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