佳き日に
「このテープは雨から送られてきた。」
「……え。」
「五日後、港町の海に赤い女一人で来い、だとよ。一人で来なかったらこのテープをテレビやラジオで流すって脅しつきで。」
茜とせんべいの間に沈黙が落ちる。
パチン、とせんべいがラジオを止める。
そのすぐ後にこやかな顔で店員が枝豆を運んできた。
「上の、管部の人たちは何て?」
「とにかく、このテープが一般人の耳に入ることだけは避けてくれって。」
「つまり私一人で行けってことね。」
せんべいが苦笑いをして枝豆を齧る。
「いいよ。一人で行く。これはチャンスだし。」
自分に言い聞かせるように言い、茜も枝豆をつまむ。
きっとこれは、家族の死について知る唯一の機会だ。
枝豆を口に含み、茜はせんべいに笑いかけた。