佳き日に




「ちょっと聞いてる?」

「き、聞いてます。」

桔梗から返事が返ってきたものの、なんとも歯切れが悪い。


「で、何か分かったの?」

再度菘が詰めよれば、桔梗は助けを求めるように鉛丹を見た。
しかし鉛丹は何か考えることに集中していて桔梗と菘の様子に気づいていない。

鉛丹に助けを求めても無駄だと悟ったのか、桔梗は観念したように口を開く。


「柳琥珀、赤い女の後継人と思われている彼女は、きっと戦力外です。」

「へぇ。」

「僕たちを殺すつもりなのは、雪と閏と琴ということになります。あ、警察もですけど。」

桔梗は何か気になるのか毛糸の帽子をしきりに触っていた。

菘は袋からストレートティーの飴を取り出し口に入れる。
すっきりとした味だ。
舌のうえでコロコロと転がしながら桔梗の様子を窺う。

何か隠しているように見える。

無理矢理聞き出すのは賢いやり方には思えないし、何よりも心強い味方と仲違いするのは避けたい。

初心を忘れるな、と菘は自分に言い聞かせた。
菘の最終的目標は、本物の赤い女を殺すことだ。
椿が出来なかったことを、私はできると証明する。

柳琥珀について桔梗が何を隠していようが、菘には大した問題ではない。
きっと柳琥珀が菘の手を煩わせることはないだろう。
なんていったって彼女は一般人なのだから。
小賢しいことを考えて菘の手を煩わせるとしても一瞬で殺せるから大丈夫だ。

問題があるとしたら他の三人。
雪と閏と琴だ。

メモリーズでも殺し屋として彼らは桁が違う。
噂では灰神楽と萩も彼らに始末されたらしい。

予想はしていたので大して驚きはしなかったが。




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