佳き日に
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メールの受信音を聞き差出人の名前を見てエナカは懐かしいな、と思った。
前にメールしたのが二週間ほど前のはずだ。
よく考えてみればそんなに時間は経っていないはずなのに懐かしいと感じるのは、短い間にたくさんのことがあったからだ。
メールの差出人は白川という男。
エナカにしつこく言い寄ってきていた男だ。
最近はメモリーズ関連のことで動き回っていたのでバイトに出れず、しばらく会っていない。
何の用だろうと思いエナカはメールを開く。
『今度仕事の都合でオーストラリアに行くことになりました。』
オーストラリア。
エナカの頭にはカンガルーとコアラの姿が浮かぶ。
というか白川はどこかの小企業に勤めているとばかり思っていたのに海外に進出するような会社に勤めていたのか。
少しの驚きを感じながらエナカはメールの続きを読む。
『三年ほど帰ってこられなくなるので出発前にエナカさんに会いたいです。どこかでお茶しませんか?』
そうか、三年帰ってこないのか。
エナカはしみじみ考えた。