佳き日に
会社員は大変だなぁ、と思うと同時に私に気さくに話しかけてくれる人が一人減るんだな、とも思った。
まぁ、彼、白川は下心があってこそ話しかけてくれたのだが。
『用事がない日ならいい。』
カチカチとなんとも可愛げのない返信を打つ。
白川がいなくなったら私がまともに話せるのはせんべいと琥珀だけになってしまうな、とエナカは思った。
別に人と話すのが嫌いなわけではないが極力メモリーズに自分の素性を知られたくなかったので隠れるように生きてきた。
それが原因で今のこの友人の少なさだ。
私もしかしたら孤独死するかもしれない。
それは嫌だな、と思っていたら白川から返信が来た。
『明日は空いてますか?』
やけにせっかちだな、とエナカは思ったが別にバイト以外予定もないので困らない。
問題ない旨を伝えるとすぐに返信がきた。
『じゃあお昼ご飯をエナカさんのバイト場所と同じ通りにある喫茶店でとりましょう。十二時に集合でお願いします。』
白川からのメールを読みながら彼と明日会ったらそれからもう三年間は会えないんだな、と思った。
エナカは白川に対して同じ気持ちを持つことは出来なかったが、友人としては大切に思っていた。
彼がお裾分けしてくれたおかずもなかなか美味しかったし。
『明日が楽しみです。』
最後にそう付け加えられた文章を見てエナカは目を細める。
この時すでに、エナカが友達のように話せる三人のうち、一人はこの世を去っていたなんて、知る由もなかった。