佳き日に
「僕は生きたいです。やりたいこともたくさんありますし。だから、絶対生き延びてやるつもりです。どんな手を使っても。」
また桔梗の目が揺らいだ。
鉛丹は桔梗の動揺の理由が分かっていたので黙って頷くだけだった。
生きるためには情けや助け合いなど甘い考えは捨てるくらいの勢いでなければいけない。
愛だ友情だ思いやりだなんて、ぬるま湯の人生を生きてきた人間たちだけが見れる幻想だ。
鉛丹もそれでいいと思っていたのだ。
今までは。
鮮やかなパッケージのポテトチップが目に映る。
数時間前に見た桔梗の後姿が思い出された。
一回り小さく感じたその背中に胸がざわついた。
何を考えているのか、近づき難い雰囲気に鉛丹は声をかけられなかった。
桔梗が立ち去った後、部屋を見てみたらゴミ箱の中にあるものがあった。
青い包装紙でラッピングされた包み。
未開封のそれは、やけにゴミの中では浮いていた。
琥珀か、と鉛丹は苦笑いしかできなかった。
彼女の考えは甘い。
「兄さん。」
「何だよ。」
「僕らと菘さんは友達ですか?」
突然思ってもいなかったことを問いかけられ、鉛丹は一瞬考える。