佳き日に





この十五年間生きてきて殺し屋という職業ゆえ友達だと断言できる関係にいる人はいなかった。
それでも漫画やドラマから得た友達のイメージを考える。


「いや、ただ利害が一致した仕事仲間だろ。」

「僕らと椿さんもそうですか?」

「あぁ。そうだな、仕事仲間だ。」

友達。
鉛丹は誰にも聞こえないくらいの声で呟く。

桔梗は友達が欲しいのだろうか。


「じゃあ、僕と兄さんは?」

瞬間、ドキリとした。
桔梗は全て知っているのかと疑ったが、どうやらただ思いつきで話していたようだ。


「家族だろ。」

「ですよね。」

「お前、警察から逃げることができたら次何するつもりだよ。」

「とりあえず勉強します。」

「またそれかよ。」

鉛丹は短く笑った。



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