佳き日に
「僕、琥珀さんに言われたんですよ。敵じゃなかったら、友達になりたかったって。」
やっぱり、彼女は甘い。
再度鉛丹はそう考え、でもそれが当たり前なんだよな、と思った。
友達をつくって、優しさに触れて、助け合って。
周りの人たちに愛されて。
そうやって、子どもは成長してゆくものだろう。
「言われたときは戸惑いましたし、あんなふうに優しくされてどうすればいいのか分からなかったんですけど、ここ数時間考えて分かったんです。僕、案外流されやすいみたいで。」
ふっと視線を下ろし、それでいて嬉しそうに桔梗は笑った。
「人間とメモリーズが当たり前のように友達になれる世界を、夢見ていました。」
鉛丹はゆっくりと息を吐く。
桔梗が思い描いた未来はきっと明るい。
問題も山積みだろうが桔梗ならきっと乗り越えていける。
長い年月を共にしてきた鉛丹には変な自信があった。