佳き日に
「だが、何があっても死なないと、約束してくれ。」
雨は茜の目を見つめてそう言った。
「頼む。」
何が言いたいのか、何が目的なのか。
口の中が急激に渇いていった気がする。
何か自分はとんでもないことをしてしまったような妙な罪悪感に襲われる。
違う、ままならない頭が発した、違和感の正体。
家族の死のとき感じた違和感はこの男だ。
この雨という男が、違和感で。
こめかみを汗が流れていったのを感じる。
何故か、目の前には口元に微笑みを浮かべた雨がいる。
この男を殺せば、何か分かるかもしれない。
混乱した頭でそう考える。
気付けば引き金を引いていた。
パァンッと渇いた音が響く。
赤い花のように血が舞う。
くすんだ空に、鮮やかな赤。
そして、怒涛の勢いで流れこんでくる、何か。
「……は。」
乾いた声が漏れていた。
横たわった雨。
その光景が突然ボヤける。
止めようと思う間も無く、次々と頬をつたって落ちてくる涙。