佳き日に
風葬、そして空葬




[2]




サワサワと寒そうな木枯らしの音がする。

菘が用意した車は振動が少なくていい。
窓から差し込む朝の光に桔梗は目を細める。
今はまだ朝の六時で、光が気持ちよく降り注いでいる。

車が停まると、そこからはもう持久戦だ。

ただひたすら、柳琥珀が家から出てくるまで待つ。

ふぁぁ、と隣で鉛丹が欠伸をしたのが分かる。
疲れたのだろう。
朝から工事員の格好をして「通行止め」の看板をあちこちに立てかけて歩き回っていたのだから。


「普通学生は何時に登校してくるの?」

「大体八時には学校に着くよう登校してくると思います。」

桔梗は菘と会話しながらロープを準備しておく。
勿論、琥珀を拘束するためのだ。

一応琥珀を捕まえるのは桔梗と鉛丹二人がかりでやることになっているが、別に一人でも十分だろうと思う。
自分たちの実力では一般人の女性相手に手こずるようなことはない。
まぁ、琥珀を連れ去るときに雪や閏や琴が来てしまったら話は別だが。

桔梗がそんなことを考えていると、車内に鉛丹の呑気な声が聞こえた。



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