佳き日に
「菘さん、僕と兄さんは降りますね。」
「え?」
「は?」
見事に前と隣の声がかぶった。
珍しくきょとんとした菘の顔がバックミラーに映る。
桔梗は先ほどの鉛丹のようにフンと鼻を鳴らした。
「菘さんはこの車で彼らのところに突っ込んでいってください。彼らが車を避けてバラバラになった時に僕と兄さんが琥珀さんを捕まえます。」
ポカンと口を開け呆然としている鉛丹とは対照的に、菘は少し考え込むような顔をした。
長いまつげがゆっくり上下した。
「殺す勢いでいかないと、あいつらはすぐ体勢を立て直すよね。」
凛とした声でそう言った菘に鉛丹がギョッとした顔で詰め寄る。