佳き日に





「浴室掃除はどうしたのよ?」

「それが今、主任が呼ばれていて……」

「はぁ?ただでさえ時間ないこんな時に?」

怒ったおばさんの声は耳にキンキンと響く。
どこか隠れることができる場所はないか鉛丹は考え、洗面台の下にもぐった。
息を潜め、更衣室の外での会話に耳を澄ませる。


「それが、今どこかのお偉いさんが来てるらしいんです。」

「何のために?」

「分かりません。とりあえず従業員に一回外に出て来てほしいらしいです。」

はーっと、おばさんのため息が聞こえた。


「めんどくさいなー。」

ズカズカとした足音は段々小さくなっていった。
ひとまず鉛丹はほっとした。
清掃員が入ってこなくて本当によかった。

洗面台から立ち上がり、それにしてもさっきのおばさんの清掃員、嫌な奴だな、と思った。

話し方といい、偉そうな態度といい、絶対友達にはなりたくないタイプ。
眉を寄せる。
まぁ、どこの世界にも嫌な奴はいるもんだよな。
そう思い鉛丹は思考を切り替える。




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