佳き日に





うかうかしていたら定期清掃の職員の用事が終わり来てしまう。
逸る気持ちを抑えもう一度女子更衣室を見回す。

そうしたら、更衣室の右側が別の通路に繋がっていることに気づいた。
分かりやすく矢印が引かれデカデカと「女子レストルーム二階」と表示されていた。
赤い文字でくっきりと表示されたそれは落ち着いて部屋を見回せば嫌でも目に付く。

むしろなぜ今まで気付かなかったのだろう。
焦ると視野が狭くなるのか。
考えながら鉛丹は音をたてずに階段を登っていく。

琥珀が女湯に入ったのは確かだ。
だが浴場にも更衣室にもいないとなると行く先は一つ、レストルームしかないだろう。

階段の先の部屋の襖は閉じている。
あそこか。

鉛丹はそう思うと銃を持ち思いっきり襖を蹴破った。
ガコンッと音がして襖はいとも簡単に外れ吹っ飛んだ。

視界が開けたところでレストルームを見回す。




そこで鉛丹を待ち受けていたのはやはり琥珀だった。


鉛丹の予想は正しかった。



ただ一つ、予想外。

琥珀は不審者捕獲用のさすまたを持ち、鉛丹を待ち構えていた。





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