佳き日に




慌てて銃を取ろうと腕を後ろに回した瞬間、パンッと空気を切り裂くような音がした。
熱くなる肩。
撃たれた。


「情報交換だ。死にたくなかったら全部話せ。」

そう言って銃を突きつけてくる雪は、何か急いでいるようだった。
後ろから手際良く菘の手を縄で縛る閏がこっそり耳打ちしてくる。


「すいません。雪先輩今気がたっていて。」

「はぁ?」

「早く助けに行きたいそうです。」

クスリと閏が笑った気配がした。
和やかな笑い方だった。

なんだかそれがこの緊迫した状況に合わなくて菘は戸惑った。


「おい、閏。」

雪が隣で不機嫌そうな声を出す。

噂は何度も耳にしたことあれど、菘は雪と閏とは初対話だった。
想像していたのは無駄なく静かに終わらせる姿だったが、今目の前にいる二人は全然違う。

仲間をからかうわ看板は投げるわ、全然スマートじゃない。

クスクスと声を押し殺して笑う閏を見るとまた変な気分になる。
狙撃手って奴らは、無口無表情でロボットみたいなのが多いと思っていたけど、閏は違うんだな、と菘は思った。




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