佳き日に
「ここ一ヶ月で秘密警察の人間が十人殺された。」
「私じゃないよ、殺したのは。」
「分かってる。殺したのは政府の連中だ。」
「政府?」
政府っていえば、国家とか政治家とかそんな言葉が連想される。
人間の組織。
人間同士で何か揉め事があったのだろうか。
「つまり、メモリーズ討伐の指揮権は政府に移ったんだ。秘密警察はすでに取り込まれた。」
「あんたたちも秘密警察から政府に移ったの?」
「いや。微妙な位置だ。」
「なにそれ。」
ふーっと息をつく。
撃たれた肩がジクジクと痛む。
雪は菘から何か聞き出したがっている。
何か、とは何だろう。
菘はボンヤリと考えていたら、冷たい雪の声に現実に戻された。
「椿の言ったことが全部本当だとは限らないだろ。」
「……は?」