佳き日に
「一つの可能性に賭けて、椿は嘘をついた。色んな所から情報を集めて俺はそう思ったけどな。」
「嘘って?」
「椿が赤い女を殺したがっていたことだ。」
「え?」
頭がグルグルして雪の話を上手く繋げられない。
菘は困惑したまま雪に問いかけた。
「でもさ、椿は赤い女を殺そうとして、殺されたんでしょ?」
「あぁ、そうだ。」
「じゃあやっぱり赤い女を殺したかったんでしょ。」
「いや違う。」
「はぁ?」
つい大きい声を出せば、ズキンと肩が痛む。
菘は顔を顰めた。
「雪先輩、僕も何のことだか理解出来ないんですけど。」
おずおずと後ろから閏も話に交ざってきた。
「椿が赤い女に殺されたのは知ってるよな?」
「それは噂で聞きました。」
口に手を付け雪は一拍黙った。
窓ガラスの先の路地の風景を暫し見つめてから、こう切り出した。
「政府の本拠地に入りたい男がいたんだ。」
「メモリーズですか?」
閏の問いに雪はゆるゆると首を振った。