佳き日に




「一つの可能性に賭けて、椿は嘘をついた。色んな所から情報を集めて俺はそう思ったけどな。」

「嘘って?」

「椿が赤い女を殺したがっていたことだ。」

「え?」

頭がグルグルして雪の話を上手く繋げられない。
菘は困惑したまま雪に問いかけた。


「でもさ、椿は赤い女を殺そうとして、殺されたんでしょ?」

「あぁ、そうだ。」

「じゃあやっぱり赤い女を殺したかったんでしょ。」

「いや違う。」

「はぁ?」

つい大きい声を出せば、ズキンと肩が痛む。

菘は顔を顰めた。


「雪先輩、僕も何のことだか理解出来ないんですけど。」

おずおずと後ろから閏も話に交ざってきた。


「椿が赤い女に殺されたのは知ってるよな?」

「それは噂で聞きました。」

口に手を付け雪は一拍黙った。
窓ガラスの先の路地の風景を暫し見つめてから、こう切り出した。


「政府の本拠地に入りたい男がいたんだ。」

「メモリーズですか?」

閏の問いに雪はゆるゆると首を振った。




< 506 / 627 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop