佳き日に
「同時期、政府は生きたメモリーズを捕まえたかった。」
「何のためによ。」
「実験台にするため。」
つい口を出してしまった菘。
だが、すぐに雪の言葉に気を取られる。
実験台。
メモリーズを使って何の実験をすると言うのだろう。
「メモリーズを捕まえるというのはなかなか難しい。秘密警察は見つけたら片っ端からメモリーズを殺すからな。だからと言ってメモリーズを政府が捕まえようとすれば殺される恐れがある。だから政府はメモリーズを生け捕りに出来ずに気を揉んでたんだ。」
「そこまでして生きたメモリーズを使いやりたかった実験って何ですか?」
「確信はないが、恐らく細菌兵器か何かだろう。メモリーズにだけ効果があるやつだ。」
十秒ほど車内に沈黙が落ちる。
「細菌?」
「あぁ。メモリーズの成り立ちは非科学的なもののはずなんだがな。たくさんのメモリーズの死体、つまり身体がゴミになる過程を調べたらしい。そしてついにメモリーズの身体を故意的にゴミに戻す方法が見つかった。その細菌が人間に効かないことはすぐに調べられたが、生きたメモリーズに本当に効くかを調べるのに時間がかかったんだ。ずっと前から細菌は出来ていたのにな。」
「じゃあメモリーズを殺す手段を選ぶなってのは何だったんですか?」