佳き日に
「カモフラージュだ。」
カモフラージュ。
正しい発音はカムフラージュじゃなかったっけか、と菘は思ったがどうでもいいか、とすぐ話に意識を戻した。
「ここでさっきの話に戻るが政府の本拠地に侵入したい男ってのは、この細菌を使ってメモリーズを一掃する計画には反対だったんだ。」
「その男、人間ですよね。」
「あぁ。」
閏が瞳に戸惑いを滲ませる。
おかしな話だと菘も思う。
人間のくせにメモリーズを殺すことに反対だなんて。
細菌といっても人間に害はなくメモリーズだけを殺せる。
メモリーズがいなくなれば治安だって良くなるだろうに。
「変な話だとは俺も思った。その男は秘密警察に所属していて、メモリーズとは敵の立場にいるはずなんだけどな。」
秘密警察という立場であったのにメモリーズ殺しは反対。
ますます訳が分からない。
菘が視線でそう訴えれば、雪はポツリと言葉を零した。
「フェアじゃないと思ったらしいんだ。」