佳き日に
「フェア?」
「あぁ。戦って殺すのは弱肉強食の法則に則っているからいいんだと。」
「わけわかんない。理由になってないじゃん、それ。」
「でも、メモリーズにとっては数少ない味方だ。その男は細菌を政府の本拠地から盗んで抗体を作ろうとしていたんだ。裏社会にはそういうのに詳しい奴がいるからそいつに作ってもらおうと思ったんだろ。」
菘はそれでも納得がいかなかった。
フェアじゃない。
それだけの理由で人間がメモリーズの味方をするだろうか?
何かもっと別の、深いわけがある気がして仕方ない。
「男は政府に疑われていた。まぁ、重要なメモリーズを殺す細菌を盗まれたら政府だってたまったもんじゃないから警戒してたんだろ。そこで、椿が関わってくるんだ。」
「椿が?」
思わず菘は身を乗り出していた。
「政府は男とその友人、言ってしまえば本物の赤い女を警戒していたんだ。」