佳き日に




[3]





消毒液と、血の匂い。

住居と診察室が一緒くたになった部屋は清潔とは言い難かった。


「本当に止血だけでいいのか?」

「うん。時間がないの。」

菘は左肩の痛みに顔をしかめる。

すぐに椿が言っていた墓に行きたかったのだが、この銃創では出血死する恐れがあるので闇医者の元へ来たのだ。

眼鏡をかけた医者が二人。
一人は太っていて、もう一人は痩せている。


「闇医者が二人もいるなんて贅沢だね。」


普段東京の方で菘を看てくれる闇医者は一人で切り盛りしていた。
他の地域に行ったときも大抵一人だったので闇医者とはそういうものだと思っていた。

菘の言葉に太った医者は顔を上げた。





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