佳き日に
バタークリームエンドロール
[7]
「頼む。」
頭がボンヤリする。
これはやばいな、出血が多かったのか。
感覚が鈍って堂々巡りで同じことを考えていた琴でも、その言葉だけはハッキリと聞き取れた。
言い放ったのは鉛丹だろう。
凛とした声だった。
頼む。
鉛丹はそればっかり言ってるな、と琴は思った。
公園で、琥珀と鉛丹の会話を盗み聞きしたとき。
あの時のことを思い出した。
「頼みがあるんだ。」
琴は鉛丹と直接話したことなどないに等しかったが、その声が真剣なのは分かった。
ひと気のない公園では寂しい秋風が吹いていた。