佳き日に
「いつも無表情で黙り込んでいた桔梗を放っておけなくて、ずっと一緒にいたんだ。そしたらいつの間にか周りからは双子だとか兄弟だとか言われるようになった。」
ジャリッと、琥珀が地面を足でこする音がした。
「血は繋がってなくても、もう家族みたいなものじゃないかな。十年くらい一緒にいたんでしょ?」
「あぁ、そうだな。うん、俺も家族だって思ってる。」
ジャリッと、先ほどの同じ音がした。
「桔梗の夢知ってるだろ?メモリーズも人間と同じように生きられるような世界にするってやつ。」
「うん。一回目の勉強会でそんなこと言ってたね。」
そんなこと言ってたのか。
大人しく、冷静そうな顔してけっこうデカイこと考える奴だ。
琴の中で桔梗のイメージが少し変わった。
いつの間にか琴は鉛丹の話に聞き入っていた。
「俺は桔梗みたく先を見通して行動するのは苦手だ。メモリーズが普通の生活を送れる社会なんていうのもぶっちゃけそんなに望んでない。俺とあいつは考えることが全然違うんだよな。でも、あいつの前向きな姿勢は好きだ。やりたいことがあるならやらせてあげてーし、夢は叶えてほしい。生きていてほしい。」
鉛丹の口調は淡々としていた。
だが、そこに琴は鬼気迫るものを感じた。