佳き日に




とりあえず一回落ち着こうということになり、今はエナカの家にいる。
グッタリとしていた桔梗はエナカの家の布団で眠り続けたままだ。


「落ち着いた?」


琥珀の前に置かれたホットミルク。
エナカが持ってきてくれたのだ。
口に含めば暖かく、幾分か琥珀も心に余裕ができた。


「琥珀、日記。」

「あ、うん。」


雪に促され琥珀は煤まみれの鞄から雨の日記を取り出す。

そういえば、エナカは茜であって、赤い女であるんだよなぁ。
変な感じだ、と琥珀はエナカに日記を渡しながら思った。

日記を受け取ったエナカは一瞬それを愛おしそうに見てからポケットを探り始めた。


「これ、お礼にあげるよ。」


そう言ってエナカはポケットから小さなガラス瓶を出し雪に渡した。


「抗体。二滴で十分だから、閏と桔梗って子にもあげて。」

「分かった。」


なんの話をしているのか琥珀にはさっぱりだったが雪には分かったようだ。
すぐに踵を返し閏が桔梗を看病している部屋へと歩いていった。





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