佳き日に






「雪先輩の読み、当たってましたね。」

「何の話だ?」

「抗体はもう出来てたってやつです。」


小さなガラス瓶を閏は思い出す。
あれのおかげで雪と閏と桔梗はこれからも生き延びられるだろう。

ちらりと花屋を見やる。
琥珀がまだ出てこないのを確認して、一つ咳払いをする。


「雪先輩。」

「何だ。」

「出る直前にエナカさんに渡していたお金は、何ですか。」

「……。」

「桔梗のため、ですか?」

「……。」

沈黙は肯定と受け取っていいだろう。
まさか雪が元とはいえ敵を助けるなんて。

必死に桔梗を守ろうとした琥珀の顔が浮かぶ。
閏は知らず知らずのうちに口元をほころばせていた。

彼女はある意味偉大だ。





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