佳き日に
[2]
二人の男女。
歳は二人とも四十代後半くらい。
男はどこにでもいそうな平凡な顔。
うだつの上がらないサラリーマンの典型と言ってもいいだろう。
女は美人だ。
シワはあるが、それでも彼女と同年代の女性と比べれば美しい方だ。
桔梗は横になったまま二人の様子を観察する。
だいぶ頭がスッキリしてきて、状況も分かってきた。
桔梗の目の前にいる二人はエナカと白川。
そしてここはエナカの家。
二人は人間。
だけど二人共メモリーズの存在を知っているようだ。
秘密警察か政府の人間なのだろう。
だが一方で二人は桔梗を殺そうという素振りは見せない。
不思議だ。
そう思いながら桔梗は二人の会話を聞く。
「エナカさんその小切手どうしたんですか?」
「もらった。」
「へ!?0が八つついてますけど!一千万!?」
「一億だよあほ。」
「あれ!?」
男の大げさなポーズに女は呆れている。
漫才のような会話に桔梗は微かに笑みを漏らす。
エナカはチラリと桔梗に目を移した。
そしてすまなそうに笑う。
「ごめん、うるさかったね。」
「い、いえ。」
実際桔梗はそこまで眠くはなかった。
それでもエナカは白川を押し出て行こうとする。
「白川、詳しい話はあっちの部屋でするから。」
「は、はい。」
出て行ってしまった二人を桔梗はボンヤリと見つめた。