佳き日に
[5]
コポコポ、とお湯が湧く音がした。
閏は急いで立ち上がり急須にお湯を注ぐ。
アールグレイの匂いが仄かに香った。
段ボールを何箱も使い荷物を片付けている雪に紅茶を渡す。
そこで閏は部屋を見回す。
「琥珀さんいないですね。」
「外に出たみたいだぞ。」
「外?」
なんとなく気になって閏は外へ出る。
遠くに行ってなければいいが、そう思って外に出たのだが、それは杞憂だった。
玄関を出てすぐに琥珀は見つけられた。
建物の脇の土がむき出しになっている所に彼女はしゃがんでいた。
閏には背を向けている。
ゆっくり閏は琥珀に近づく。
「何してるんですか?」
閏の声に反応してゆっくり琥珀が振り返った。
前屈みになって彼女の手元を見てみると、土の上に花が置かれていた。
先程花屋で買った花だろう。
「からとむらい。」
琥珀が目を細めてそう言った。
だが、その単語が何か分からず閏は瞬きする。
「青い空の空に、葬式の葬で、空葬。」
からとむらい。
空葬。
閏はようやく頭の中で繋がった。
葬という漢字がつくのだから、葬式だろうか。