佳き日に
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ガチャン、と植木鉢を動かす音がして、疲れた顔の白川が帰ってきた。
「戸籍、色々と手を回してもらったのでなんとか作れましたよ。」
「お疲れ。」
ハーッとため息をついて椅子に座った白川。
エナカは冷蔵庫から冷えたビールを取り出し彼に渡す。
「そういえば、関東地方では予想以上にメモリーズに手こずったらしくて、こっちよりも二日ほど早く細菌をまいたらしいですよ。」
「だからニュースも早かったんだ。」
プシューッと小気味いい音を出して白川はビールを開ける。
エナカは机の端に置きっぱなしになっている小さなガラス瓶を見やる。
透明な液体が中でキラキラしている。
液体はまだ残っている。
「ねぇ。」
「はい?」
エナカの呼びかけに、白川は口の周りに泡をつけながら応じる。
かなり間抜けだ。