佳き日に
最高の復讐
[5]
伊達眼鏡をかけ、リュックをしょう。
鏡の前に立つ。
よし、どこにでもいる普通の人。
閏は確認して最後にもう一度自分たちの形跡が残っていないか部屋を見回そうとした。
そこで、軽快な着信音が鳴った。
携帯を取り出し発信者を見てみると、珍しい相手だった。
「はい、もしもし。」
『………閏か?』
電話の相手は、何度か情報交換を行ったことがある人間の情報屋だった。
やけに訝るような口ぶりだった。
「すいません。僕もう日本から出るんですよ。ていうか、仕事ももうしないつもりなんです。」
『あ、あぁ。』
「やけに挙動不審ですけどどうしたんですか?」
閏は眉をひそめる。
情報屋は仕事の依頼か何か用事があってかけてきたわけじゃないのか。