佳き日に




[5]





空港に家族連れは少なく、どちらかというと海外を飛び回っているのであろう商社マンが多かった。

閏はロビーの椅子に腰を降ろす。

飛行機の時間まであと一時間ほどある。

そこで、暇つぶしにブラブラしていたお土産屋でそれを見つけた。


『昔なつかし!バタークリームのロールケーキ!』


そんなポップが目に留まる。
淡い肌色の箱に入れられ積まれていたそれを目にした瞬間、なつかしいな、と思う。

四人で過ごしていたときに食べた。
味は分からなかったが、楽しい時間だった。

思わず閏はそれを一つ買っていた。


ロビーの椅子に再び戻り、早速開ける。
コンビニの安いロールケーキ一本丸かじりしている大学生はよく見かけたが、まさか自分が同じことをするようになるとは思わなかった。

ハム、と一口かじる。
フワフワの食感に水分が取られる。

まったりと口に粘つく感触。

甘みとしょっぱさがちょうど良くて、美味しい。


「………。」


美味しい?


もう一口、ハムリとかじる。

仄かな甘みと、バターのまったりとした濃厚な味。
美味しい。


「あれ。」


嘘だろ、と閏は思わず呟いていた。




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